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レッスン 7 / 10·約 9 分·第8期 仮想化とクラウドの土台

クラウドは他人のコンピュータ — リージョンとAZの物理

アプリと DB の下に何が積まれているか(左が下、右が上)
  1. 物理機リージョン/AZ今ここ
  2. ハイパーバイザVM exit で捕まえる
  3. VMゲストOS
  4. コンテナnamespace / cgroup
  5. プロセスアプリ / DB

一番下の段。借りた機械は物理的にどこにあるか。ハイパーバイザもコンテナも、最後は誰かの建物の機械の上で動く。

まず結論

クラウドで借りた計算資源は、どこかの建物にある実物の機械です。リージョンは地理上の場所、AZ(アベイラビリティーゾーン)は電源・冷却・網が独立した1つ以上のデータセンターで、可用性の約束はこの物理的な分離から来ています。

そして厄介なことに、設定ファイルに書く AZ 名は物理位置の名前とは限りません。全アカウント共通で物理を指すのは AZ ID のほうです。

? 読む前に予測

あなたのアカウントの `ap-northeast-1a` と、同僚の別アカウントの `ap-northeast-1a` は同じ建物ですか。

当てることが目的ではありません。外した予測ほど記憶に残るので、直感で選んでください。

抽象原理

可用性の約束は、物理的に離れていることから来る

このコースで見てきた層は、最後には実物の機械に着地します。ハイパーバイザもコンテナもその中のプロセスも、誰かが建てた建物の鉄の箱の上で動きます。その建物をどう束ねるかが、リージョンと AZ です。公式文書の定義です。

読み落としやすいのは one or more(1つ以上)です。AZ は建物1棟と1対1ではありません。では何が AZ を分けるのか。文書は続きます。

Each AZ has independent power, cooling, and physical security and is connected via redundant, ultra-low-latency networks.

電源・冷却・物理セキュリティが独立していること。これが AZ の境界です。停電や落雷が1つの AZ を襲っても他は別の電源系統で動き続ける、という賭けの上に可用性の設計が載ります。

具体実物

離れているが、遠すぎない

どのくらい離れているか。同じページに数値があります。

AZs are physically separated by a meaningful distance, many kilometers, from any other AZ, although all are within 100 km (60 miles) of each other.

意味のある距離、数キロメートル以上。ただし互いに 100 km(60 マイル)以内。離れているが、遠すぎない設計です。同じ文書は AZ 間の網が同期レプリケーションに足る性能を持つとも述べます。距離は遅延に直結し、離すほど良いわけではありません。

✓ ここまでの確認

「AZ とは1つのデータセンターだ」という説明は妥当ですか。

抽象原理

名前は、物理を指すとは限らない

設定ファイルに書くのは ap-northeast-1a のような AZ 名です。リージョンコードに英字を足した形で、いかにも「a が1番目の物理 AZ」という顔をしています。ところが AWS の文書は、そう読まないよう釘を刺します。

Originally, we decided to independently map Availability Zones to codes in each AWS account. This ensures that resources are distributed across the Availability Zones for these Regions, even if most customers chose the first Availability Zone in the Region.

利用者の多くが「とりあえず a」を選ぶから対応をずらした、という設計です。名前は物理の名前ではなく、アカウントに割り当てられた別名でした。ただし今は条件つきです。文書は続けます。

All Regions introduced after November 2012 use a uniform mapping of Availability Zones to codes.

In the following Regions, for accounts created before November 2025, we independently map Availability Zones to codes for each AWS account. … Accounts created starting November 2025, get the same Availability Zones mapped to codes. All other Regions use a uniform mapping.

対応がずらされるのは、古くからある一部のリージョン(東京・バージニア北部・オレゴン・北カリフォルニア・シンガポール・シドニー・アイルランド・サンパウロ・GovCloud US-West)で、かつ 2025年11月より前に作られたアカウントの場合だけです。他は共通です。一方、無条件に成り立つ事実があります。

To coordinate Availability Zones across accounts in all Regions, even those that independently map Availability Zones, use the AZ IDs, which are unique and consistent identifiers for Availability Zones.

AZ ID は、どのアカウントでも同じ物理位置を指します。 形式はリージョン固有の接頭辞 + -az + 数字です。

具体実物

実物の対応表

認証済みの1アカウントから取得した対応表です。

$ aws ec2 describe-availability-zones --region <region> --query 'AvailabilityZones[].[ZoneName,ZoneId]' --output text(aws-cli/2.36.9、macOS、2026-09-16 05:10 UTC、あるアカウント1つでの結果)コマンド出力
--region ap-northeast-1
ap-northeast-1a apne1-az4
ap-northeast-1c apne1-az1
ap-northeast-1d apne1-az2
 
--region us-east-1
us-east-1a use1-az1
us-east-1b use1-az2
us-east-1c use1-az4
us-east-1d use1-az6
us-east-1e use1-az3
us-east-1f use1-az5

東京の -1a が apne1-az4、-1c が az1、-1d が az2。名前の順序と ID の番号が揃いません。 さらに ap-northeast-1b が出てきません。

この表はこのアカウントでの一例です。 他のアカウントで同じになるとは限らず、1b の不在もこのアカウントの都合です。「東京リージョンの対応表」として持ち出さないでください。

✓ ここまでの確認

複数のアカウントで「同じ物理 AZ に置く」を確実に揃えたいとき、何を基準にしますか。

⇄ 2つを見比べる
具体例 A

ルートサーバの13という名前(第25週)

第25週『名前からアドレスへ — DNSは巨大な委任の木』で見たとおり、ルートサーバは13の名前を持ちますが13台ではありません。IANAは「数百のサーバからなるネットワークが、ルートゾーン上は13の名前付き権威として構成されている」と説明します。名前は固定でも実インスタンスは増減します。

何の数か(第25週より)表
何の数か 値 注意
ルートゾーン上の名前 13 a〜m.root-servers.net
実際のサーバインスタンス 約2000 2026年9月時点。日々変わる
運用組織 12 13ではない
具体例 B

AZ 名と AZ ID

AZ 名の `a` は「1番目の物理 AZ」ではなく、アカウントに割り当てられた別名であることがあります。物理位置を全アカウント共通で指すのは AZ ID です。名前は固定のまま裏で対応を散らします。

何を指しているか表
識別子 指すもの アカウント間で同じか
AZ 名 アカウントに割り当てた別名 条件による
AZ ID 物理位置 常に同じ

どちらも名前が物理を1対1で指しません。この非対応で何が守られ、何を間違えうるでしょうか。

名前の側が変わらないことで誰が楽をしているか、名前を数えた人が何を数えたつもりになるかを考えてみてください。

抽象原理

1枚の図にすると

リージョンから物理機まで(AWS 公式の定義による)
リージョン地理上の場所。最低3 AZ
隔離され物理的に分離された単位へ
AZ 1独立した電源/冷却/物理保安
AZ 2同上
AZ 3同上
各 AZ は 1つ以上(one or more)
データセンター × 1以上冗長化された電源・網
建物の中に並ぶもの
物理機上にハイパーバイザとコンテナが載る
  • ・AZ 同士は互いに 100 km(60 マイル)以内。低遅延の冗長な網で結ばれる
  • ・AZ 名(`…-1a`)が図のどの箱を指すかは条件で変わる。物理の箱を常に名指すのは AZ ID

この章のまとめ

  • リージョンは地理上の場所、AZ は電源・冷却・物理セキュリティが独立した1つ以上のデータセンター。 定義は "one or more discrete data centers" で、建物1棟と1対1ではない。
  • 1リージョンは最低3つの AZ から成る。 2つの公式文書が "a minimum of three" / "at least three" で一致する。
  • AZ 間は意味のある距離(数 km 以上)離れるが、互いに 100 km(60 マイル)以内。 この記述は aws.amazon.com のグローバルインフラのページにあり、EC2 のユーザーガイドには無い。
  • AZ 名が物理と1対1でないのは条件つきの事実。 独立した対応づけは古くからある一部のリージョン、かつ2025年11月より前のアカウントのみ。2012年11月以降のリージョンは当初から共通、2025年11月以降のアカウントは全リージョン共通。「ランダムに割り当てる」と無条件に言うと外れる。
  • 無条件に成り立つのは AZ ID。 どのアカウントでも同じ物理位置を指す。アカウントをまたぐときの基準はこれ。
  • 名前と実体の非対応は第25週のルートサーバと同じ構造。名前の一致を実体の一致と読み替えない。

問題で詰めるなら、クイズ群『開発とツール』の「AWSの基礎」が該当範囲です。設計まで降りるなら、コース『AWSサービスの内部原理』の「サブネットは1つのAZに閉じた小区画である — AWSが各サブネットで先取りする5つのアドレス」「耐久性と可用性は別物 — データが消えないことと、今すぐ読めること」が続きです。次回はどこまでが自分の責任かという線を見ます。

自分の現場で確かめる

読んだだけでは身につきません。手元の環境で実際に見てみてください。

環境:

理解度チェック

読んだ直後は「分かった」と感じやすいものです。実際に解いて確かめてください。

問題 1 / 4正解: 0

リージョンと AZ の関係として、AWS 公式に合うものはどれですか。

用語集(4語)
リージョン
データセンターを集積した世界各地の物理的な場所。互いに隔離されるよう設計され、リソースがリージョン間で自動複製されることはない。
AZ(アベイラビリティーゾーン)
リージョン内の、冗長化された電源・網・接続性を持つ1つ以上の独立したデータセンター。電源・冷却・物理セキュリティが独立している。
AZ 名
`ap-northeast-1a` のような、リージョンコード + 英字の識別子。条件によってはアカウントごとに別の物理を指す。
AZ ID
`apne1-az4` のような、リージョン固有の接頭辞 + `-az` + 数字の識別子。どのアカウントでも同じ物理位置を指す。